1/13/2016

水晶体の叫び

青臭い河川敷の上空に浮かぶ

ウサギの国が豆電球に変わってしまったころ

キャンプ場に浮かぶ綿ぼこりの間を飛んでいるのは

流星なのか、ハエなのか

私のキャンバスはどこへ行ってしまったんだろう

理由のない喜びの記憶は、するりと筆から抜け出して

私に背を向けてしまうけれど

羊飼いよりも7週間早く生まれたあの人の瞳を覗き込むために

この光の記憶から目を背けたくはない

4/30/2015

「奴隷」


つまらない

紙を




橋の上から


投げ



     捨てる



紙の上に

  印刷されてしまった

  真夜中の戯言は

繊維と共に

  

バラ


 バラ


  になって




                溶けてしまう。



溶けてしまえばいい。


ミューズがアメジスト色の光の中から中指を立てる

ゴッホが「模範の奴隷になるな」という



奴隷の


言葉のダンスは

言葉によって始まり

言葉によってジャッジされ

言葉によって終わる


言葉の命は

言葉によってねじ伏せられる


言葉の馬小屋

言葉のトサツ場


奴隷は


言葉の亡骸を集め

真夜中の訪れを待つ。




430日、2015年)

4/24/2015

文明と電波に寄せて

スマホ中毒の人
SNS中毒の人
ガラケーにこだわる人
ケータイが嫌いな人
パソコンが苦手な人
アナログツールしか使わない人
デジタルしか使わない人
いわゆる筆不精の人
機械に縛られるのが嫌いな人
機械を使いこなす人
エネルギーを無駄にする人
エネルギーを節約する人
そもそもエネルギー不足な人々
束縛の強い人
束縛の嫌いな人

連絡をする
状況確認をする
メールする
ラインする

その人の事を把握しないと気が済まないから
その人がどうしたのか分からないから心配だから

誰からも干渉されたくない
興味ない
自分一人になりたい
何もしたくない

やらなくちゃいけないこと
やらなくてもいいこと
やってあげないといけないこと
やってもらわないといけないこと

やってるのに誰も気づかないこと
やらないことに誰もが気づくこと

迷惑はかけたくない
迷惑を被りたくもない
いっそ何もしたくない
怒られたくない
嫌われたくない
でもやらなくちゃいけないことがある
やらなくちゃいけないことがある
自分一人でやらなくちゃいけないこと
自分がやらなくてもいいのにやらなくちゃいけないことがある

いっそこんなものなければ楽なのかな
皆そんなに縛られたくないんだったら
全部捨てちまえよ
干渉されたくないなら
出て行けばいいんじゃないかな

返事が欲しいと思うのは迷惑なのか
返事なんかどうでもいいと思うのは冷たいことなのか

迷惑にもならなくて冷たくもならなくて、過干渉じゃなくて、束縛しなくて、傷つけないで、背中を押すためには何をしたらいいのかもうわかんない。

何もしたくない
けど無理なんだろうな、って思う。

いっそのことパソコンもスマホも紙も鉛筆も皆無くなってしまえばいいんじゃないかな、
もう使わなきゃいいじゃん。
バラバラになってしまえばいいんじゃないかな。

4/19/2015

「寄り道しながら」

ギターが鳴り響く夜道
一歩歩くごとに軽くなる体
このまま空を飛んで行けそうだ
まだ、帰りたくない
そうだ、寄り道をしよう

昨日できたばかりの名前の無い川に
流してしまおう
一枚の紙

君に手渡そうと思ったけど
そのうち届くかもしれないから
川の流れが、かわりに伝えてくれるかもしれないから

紙があれば電気なんかいらないのに
それでも頼ってしまうのは何故だろう

口があれば紙なんかいらないのに
それでも頼ってしまうのは
何故だろう

(6月20日、2014年)
なつかしいなあと思いながら去年のメモを書き起こしているこの頃。

「目線」

グレーの細長い部屋の中、
思いにふける
空に恋い焦がれることは罪なのか
主人を失った殺意が揺れる足場をうろつく

どうしようもなく小さな友の手にすがると、彼は言う

前だけを向いていればいい

重く、錆びついたドアが開くたびに
期待する
外の空気が僕らを洗い流してくれないか

F5キーを連打するように、世界が
リフレッシュすればいいのに

漂う殺意をかき集めてビンに入れて蓋をして
僕だけのものにしたい
そうすれば
この空と雲は
僕のもの

(5月20日、2014年)

4/18/2015

「おこられた」

図書館の机にひらがなで「しね」と書いたら怒られた。

理科室にはビンに入ったサルの死体がいて、
廊下のロッカーにはA4の紙に磔にされたカエルがいて、
飼っていたグレーのハムスターは
ある日の朝、冷たくなって眠っていた。

休み時間に戦時中の広島の写真集を見た
給食で出てきたシシャモの天ぷらが食べられなくなった。

サトウキビ畑の歌の替え歌を作った男子のせいで私まで怒られた。
ハムスターを手のひらに乗せて、
職員室に行ったら怒られた
ヒマワリの種とクッキーと手紙と一緒にハムスターを花壇に埋めた。

教室の机に「しんだ」と書いたら、
怒られるのかな。

(4月18日、2015年)