9/27/2014

「8枚目のキャンバスを前にして」

夜明けの波から生まれた風のナイフが

すっと雲に切れ目を入れるとき

こぼれ落ちるあの色が欲しい。

ネコ屋敷の庭にわる樹の香りにあらぬ妄想

手には赤いチューブが一本。


ヒビ割れたアスファルトが染まるその色は

あの子の手帳カバーのようで

カゼ薬のようで

囚人服のような色だった。

黄色いチューブを持っているのは誰?

筆もパレットもいらない

作り方は知っているから。


太陽があくびし始めるときの

目にしみるあの色が欲しい。

あと8分すれば消えてしまうから

甘酸っぱい果実だけではもの足りないから

黄色いチューブを持っているのは誰?

私には赤いチューブしかないのだから。